TL;DR
EEGは「脳の電気活動そのもの」を直接見ているわけではなく、頭皮上で観測できる電位差として現れた混ざった信号を見ています。強みは時間解像度、弱みは空間解像度です。だからEEGFlowでは、(1)品質保証(QC)、(2)標準化(BIDS)、(3)不確実性の扱いを最優先します。
EEGとは(超ざっくり)
EEG(脳波)は、頭皮上の電極で電位差を測る計測です。たくさんの神経活動が重なった結果が、頭蓋骨や頭皮を介して観測されます。 観測は高頻度(msスケール)でできる一方、信号は空間的に“ぼやけ”やすく、解釈には注意が必要です。
得意/苦手(誤解が起きやすいところ)
| EEGが得意 | EEGが苦手 |
|---|---|
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時間変化を見る(状態遷移、位相、短い反応) 閉ループ(リアルタイム制御)へ繋げやすい |
どこで起きたかを正確に言い切る(特に深部) “個別の思考内容”をそのまま読む(過大な期待が出やすい) |
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装置が比較的安価でスケールしやすい 繰り返し計測(縦断)に向く |
ノイズとアーティファクトが多い(瞬き、筋電、電源、動き) 参照法や前処理で結果が変わる |
EEGは「うまく使うと強い」計測です。逆に、QCやメタデータが弱いと、モデルが“それっぽく”見えても実は再現しない、という事故が起きます。
解析の流れ(EEGFlowの想定)
計測とQC
インピーダンス、ノイズフロア、同期(遅延・ジッタ・ドリフト)をログとして残し、後段の解析に渡せる形にする。
前処理
フィルタ、参照、アーティファクト除去(瞬き・筋電・電源)を行い、処理条件を記録する。
特徴量/指標
スペクトル、位相同期、複雑性、状態遷移などを計算し、ベースラインと比較する。
(必要なら)ソース推定(ESI)
頭部モデルやMRIを用いて、皮質上の活動を推定する。ただし逆問題なので“不確実性”を一緒に扱う。
モデル化と検証
相関のデコーディングで止めず、刺激変更などの介入に対する予測(反事実)で検証する。
最低限のQC(これがないと比較できない)
EEGFlowでは「QCログが残っていること」を、ベンチに参加する最低ラインにします(目標)。
Minimum QC
- チャンネル品質:欠損、飽和、インピーダンス、ブリッジング(疑い)
- ノイズ:電源周波数、機器ノイズ帯域、ノイズフロアの推定
- アーティファクト:瞬き/眼球運動、筋電、動き、心電の混入
- 同期:遅延・ジッタ・ドリフト(可能ならend-to-endで)
- 前処理ログ:フィルタ、参照、除去法、閾値、除外区間
EEGがWBEに貢献できる“現実的な場所”
Realistic Contributions
- L0:公開データで再現可能なパイプラインを作る(標準化と監査)
- L1:状態(覚醒・睡眠・麻酔など)や課題条件の推定を、頑健に行う
- L2:刺激/課題の変更に対して、時間発展を予測できるモデルへ寄せる
- 縦断:日内/日間変動の中で安定な特徴と変わる特徴を分ける(本人性に繋がる材料)
よくある誤解(ここで止める)
「EEGで思考をそのまま読める」
実際にはノイズ、個体差、学習データの偏り、言語モデルの事前分布などが絡みます。何がEEG由来の情報か、反事実テストで切り分ける必要があります。
「前処理は細かい作業なので後回しでよい」
前処理や参照で結果が変わります。だからこそ、EEGFlowではQC・メタデータ・再現手順を先に固定します。